吉行和子(女優・エッセイスト)
2010年 09月 13日
いま現在の活動は?
「長いことやってました舞台をやめましたので、それで、そんなようなことを書いたひとり語りって言う本を書いて、やっと出来たんですね。ですから、少しづつ何かを書きながら、それから舞台の芝居はやらないんですけど、一応、舞台はやっていくので、誰かの舞台にゲストで出たり、それから朗読したりって、そんなことは今年も何回かあります。」
テレビ番組ですとか、そう言ったものも引き続き活動されるのですよね?
「テレビもやりますし、映画も2本か3本、これからやります。やっぱり女優って言うのもいい職業で、私のこの歳で、この歳だからやれるみたいな役もあるんですよね。」
主な舞台をなさらないのは、何か転機が?
「私ね、55年間も舞台をやったんですよ。それでね、最初のうちは大きい劇団にいましたから、ただ劇団が企画してくださるものをやってたんですけど、そこを辞めてから40年間くらいは全部自分で考えて、なにもかも、スタッフから、それから劇場を借りるお金から、なにもかもやってたものですから、ぼつぼつ限界かなぁって思いまして、だから後はそう言うことはやらないで、映画とかテレビで、私にくださった役をね、役だけ考えてやればいいかなって思ったんです。」
吉行さんにとって演技や役者の魅力は?
「違った世界に入れるってことなんですね。だから役に扮して、自分じゃない誰かに扮してやるって言いうのが、とってもノビノビと出来るんです。むしろ。現実の世界だといろいろ制約もありますけれども、フィクションの中に入っちゃったら、もう好き放題ですからね。それと自分と全然違う役って言うのも面白くて、たとえば、さっき出て来た佐賀のがばいばあちゃんなんてのは、もう凄い働き者で、いろんな仕事をするんですよね。何一つ私は実生活でやったことがないことばっかりなんですよ。そうすると結構面白くなっちゃって、元気に出来るんです。」
違う自分になれるってことが続けてこれた魅力なんですね。
「それとやっぱり舞台は生ですから実際にお客様がいらしてくださって、そこで一緒に、お客様と一緒につくってくって言う、ライブ感覚って言うんですか、だから歌手の方がやっぱりレコーディングで完璧な物をつくるのとは別に、ライブでお客様と一緒にコンサートをやるって言うと凄く高揚する、ちょっと、それに似た興奮があるんですよね。」
■長谷川きよし ♪ 別れのサンバ ♪
吉行さんは長谷川きよしさんと10年以上舞台を一緒にやられているそうです。
先日、はじめて客席で長谷川さんのステージを聞く機会があって、あらためていい歌だと思い感激されたそうです。
なぜ、女優の道に入ろうと思ったのですか?
「女優になろうと思ったことは最初なくて、中学3年の時に初めて舞台を観たんですね。私は凄く身体が弱くて、お友達と遊んだり出来なかったもんですから、子供の時から本を読んで、本の中の人達が私の友達だったわけなんですよ。それを舞台を初めて観た時に、まるで本を読んでるみたいに登場人物が、生きた人間が出て来て、しゃべって、本をめくるみたいに話が進んでいくって言う、そう言う世界があるってことを初めて知りまして、これは素晴らしい所だと思って、でも身体も弱いですし、自分が女優になるってことは考えずに、高校を卒業すると同時に劇団の試験を受けて、なんか自分がその劇団の中で出来る仕事がないかと思って。」
それがなぜ女優に?
「本当にきっかけって言うのは不思議なもので、アンネの日記と言うのを劇団でやることになりまして、アンネの日記はいまでも皆さん読んでいらっしゃる感動的なものなんですけど、主役が13歳の女の子なんですね。それで劇団の中には沢山芝居出来る人はいるんだけれどって言うんで、一般から募集したんです。それで大勢の方が応募してきて、その方が選ばれたんですけれど、もうひとり、研究所からもひとりって言うんで、私が勉強だから、出るか出ないかわからないけれども稽古場で一緒に練習しなさいって言われて、それでやってて。そしたら選ばれた、最初にアンネの役をやってた方が風邪で声が出なくなっちゃって、急遽、私が舞台に出ることになりました。」
その後、劇団はやめられてフリーで女優をやられたわけですよね。
「ちょうど時代が、そう言う時代になって来て、いろんな演劇が出来てきて、新しい演劇も出来てきたので、私はもう本当に老舗のような立派な劇団で大切に育てられてたんですけれど、やっぱり外の空気にもあたりたくなってフリーになった。」
子供の頃に身体が悪かったことは演技に支障はなかったんですか?
「やっぱり本当に元気な人と比べるといろいろ支障はあるんですけど、ただ、喘息って言う病気だったんですけど、凄く喘息って我慢強くなっちゃうんですよ。苦しいのを我慢しなきゃいけないって言うのがあって、そう言う性格がね、うまくいったんじゃないかと思って。嫌なこととかいろいろあるんですけども絶対めげないみたいな。ですから続いていたのかなって思って。」
■吉岡しげ美 ♪ 私がいちばんきれいだったとき ♪
若い時に戦争があって、そう言う時代に過ごしたって言う茨木のり子さんの詩。やっぱり8月とかになるとどうしても戦争のことを思い出しますし、忘れちゃいけないこと。そんな気持ちで選ばれた曲です。
これからチャレンジしてみたいこと?
「ともかく自分が知らないことをもっと知りたい。この歳になってもまだまだ世の中には私の知らないことが一杯あるはずだから。そう言うものを見たり聞いたり、知らない人に出会ったり、そう言う楽しみがまだまだ残ってるってことが、これからの歓びかな。」
大切にしている言葉 “好奇心”
私の中に好奇心がなくなった時は、それが最後かなって思っているから。
# by crossroadmidori | 2010-09-13 21:03 | 2010.08.20(吉行和子)