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諸田玲子さん(作家)   

今週のゲストは、静岡ご出身の時代小説作家、諸田玲子さんです。
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諸田玲子さん(作家)_f0207537_2216297.jpg小説新潮に連載されている「お鳥見女房」は、もう6シリーズ目。よくある下町の長屋ではなく、自然に囲まれた雑司が谷という場所が舞台の、江戸の大家族の人情溢れるホームドラマ。
ところで、「お鳥見役」って皆さんご存知ですか?将軍家の鷹狩のお世話をするのがお仕事で、一見重要な役ではないのですが・・・この役、実は幕府の密偵だったんではないか、という資料があるんだそうです。鷹狩を名目に将軍家や大名家に入り込んで、地形を調べたりできる立場。確かにスパイ向き?!そんな話をお聞きするだけでも、ワクワクしますね。諸田さんがお書きになっている、そのお鳥見役の奥さんは、とにかく前向きで明るくて、諸田さん自身、大好きな理想の女性なのだそうです。


諸田玲子さん(作家)_f0207537_2217336.jpg♪「郡上夢うた」 川中美幸
今年10月、東京の明治座で諸田さん原作の「お鳥見女房」のお芝居が公演されました。主人公の珠世さん役を、とても優しく演じてくださったのが川中美幸さん。「一緒にお芝居を作っていく中で、同年代の川中さんといろいろなお話ができて、本当に巡り会えてよかったと思える。舞台でやっていただいたのがとっても嬉しくって。」



諸田玲子さん(作家)_f0207537_22183845.jpg最新作「きりきり舞い」は、時代小説をあまり読んだことない方でも、大笑いして読めるお勧めの一冊。「東海道中膝栗毛」でお馴染みの十返舎一九の、娘の視点から書いているユーモア小説で、北斎の娘など様々な登場人物が出てきます。それも、みな奇人変人・・・
「江戸の人のパワーって、堅苦しいものではなくて、すごくエネルギッシュで、明るく前向きだったと思うんです。”宵越しの銭は持たない”みたいなね。そういう気質っていうのをすごく書きたいな、というのがあって。今の時代って元気がないですもん。」と諸田さん。小説の中では、そんな個性的な登場人物たちがいきいきと動き回っています。「私達の小さい頃って、家の中にもおっかないお父さんがいたり、うるさいお婆ちゃんがいたり、それから会社なんかにも、あんまり仕事はしていないけど、宴会になると元気な人とか(笑)そういう人達がいて、すごく世の中が上手くいっていたような気がするんです。今の世の中は、そういうことがないのが淋しい。もっと楽しくていいんじゃないか、と思いますよね。


諸田玲子さん(作家)_f0207537_22192591.jpg♪「Spring is here」 ミリー・ヴァーノン
このジャズの曲は、向田邦子さんがとてもお好きだったというもの。エッセイの中では、水羊羹を食べるときにイイと書いてあって(笑)






書くものといえば企画書くらい。
「本は小さい頃から、手放せないくらい、もう活字中毒くらい好きだったんですね。でも実は、元々あまり時代物を書こうという気はなかったんです。というか、まず作家になろうという気もあまりなかったし、なれるとも思っていなかった。ちょっとしたきっかけがあって、本当にクロスロードというか、変わってしまったんです。
実は、最初のお仕事は化粧品会社に勤めるキャリアウーマン。タレントさんを連れてあちこち歩いたり、記者発表に行ったり、と広報のお仕事をされていたそうです。それも外資系。と聞くと、”歴史”からかけ離れた時代の最先端のイメージ!「書くものと言えば企画書くらいしかなくって。ただ・・・リストラされたんです(笑)」 外資系と言えば、企業買収などで親会社がコロコロと変わるもの。そんなとき、広報の仕事でお世話になった出版社やテレビ局の方からのご紹介もあって、翻訳などのお手伝いを始めた。でも、あるとき、テレビドラマってどんどん消えていってしまうのが勿体無い、良いものは小説にして残しましょう、というノベライズの話が挙がって、ちょうど暇そうにしていた(!)諸田さんにお声がかかったそうです。「本当にあの時代はアバウトでしたよね(笑)」
いろんなドラマがある中で、諸田さんが『ぜひやってみたい』と思ったのが、向田邦子さんの「眠り人形」。最初は向田さんの妹さんに「お姉様のものに手をつけるのは駄目よ」と言われたけれど、ものすごい熱意があったので、一本書いて強引に持っていってしまった。そうしたら、とても気に入って受け入れてくださった。まさに、諸田さんの熱意が原動力となって、諸田さんの人生だけでなく、ノベライズの分野を切り開いた一幕と言えるのではないでしょうか。はじめ反対されていたその妹さんとは、今でもとても親しくされているそうです。


諸田玲子さん(作家)_f0207537_22215531.jpg♪「Everything but you」 ミリー・ヴァーノン
前曲と同じく、ミリー・ヴァーノン。こちらは諸田さんご自身のお気に入りの曲だそうです。前曲のアンニュイな雰囲気から一転、こちらは軽快なアップテンポのナンバー060.gif





自分のものを書きたい!
ノベライズというのは、人の言葉がまずあって、そこにいろいろな状況描写を自分で考えて入れていくんだそうです。「結末も決まっていますし。やっているとだんだんフラストレーションが溜まってくるんですよ。自分で書きたくなってきちゃう(笑)」やったことはないけれど、気持ちは分かるような気がしますよね。「向田さんのノベライズをたくさんして、行間を読むようなことを続けていたら、なんだか現代ものをしばらくちょっと書けなくなっちゃったんです。やっぱり凄い方であるので、同じようなものはなかなか書けないって。」小説を書く人には二つのタイプがあるといいます。一つは、現実のことを書く人。もう一方は、夢の世界、自分を別のところに置きたい人。諸田さんは後者。どうせなら時代物を書こうかな、と勉強を始めて、時代小説を書くようになった・・・

☆☆☆     ☆☆☆     ☆☆☆

”時代小説を書くようになったきっかけ”に差し掛かったところで、残念ながらお時間が来てしまいました。来週も引き続き、諸田玲子さんをお迎えして、気になるお話の続きをおうかがいすることにいたします。来週もどうぞお楽しみに!

by crossroadmidori | 2009-12-11 22:44 | 2009.12.11(諸田玲子)

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