カテゴリ:2009.06.05〈上口昌徳〉( 1 )   

上口昌徳(かよう亭オーナー)   

上口昌徳(かみぐちまさのり) 
大切にしている言葉:
“手桶の水は押して取れ” 柄杓で水をすくう時に、一回前に桶を押して帰ってきたものをすくう。引こうとしても(一度身体から放さなければ)水はとれない。

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              旅人の歓びが糧 山の宿

石川県の山中温泉にある僅か10室の宿 かよう亭。 今でこそ、小さなこだわりの宿は人気ですが、“かよう亭”が誕生した時、世の中は大型旅館の最盛期。どこの観光地もこぞって宿を大きくして観光バスで旅行客が訪れる時代。全国の旅館がみんな同じ方向を向いて賑わっていた頃のことです。

昭和48年のオイルショック。高度成長がこのまま続く訳がない。量的拡大はどこかで破綻する。こんなことは長くは続かない。そう感じた上口さんは何の構想もないまま、お父上を1ヶ月のハワイ旅行に出され、その留守の間に客室40、最大収容人員200人旅館を廃業してしまうのです。

その後3年を掛けて「質の良い宿屋」の構想を練る。旅館はホテルではない、10室が限度。お客は20名くらい。朝はゆっくり起きて、朝食は好きな時間に。。。大きな旅館がしていることの反対を行こう!結果は世の中の笑い者。銀行もそっぽを向く四面楚歌。

なぜ小さくするのか、父は絶対許さないと怒り心頭。その最中に「息子が考えることだから何かあるのだろう。だから言うことを聞いてやって」と言い残して亡くなった母。宿を母“かよ”の名から“かよう亭”と名付けて、廃業から4年目に開業。その時に決めた四か条!
        
        ◎朝はお客さまを起こさない。
        ◎宣伝はいっさいしない。
        ◎売り手市場であるから旅行代理店とはお付き合いしない。
        ◎利潤を追求しない。家族みんなで食べていければ良い。
 
人生はうたかたの旅 せめて佳い人と佳い旅をしたい そんな旅人行き交う宿でありたい。

深くて温かい思いやりが日本のおもてなし文化の原点、自分を無にしてお客様に喜んでいただく。それを貫徹しようとしたら大きな旅館はできる道理がない。料理は地元の素材を使い、良い器でお出しする。かよう亭の朝ご飯はおいしいことで有名。そして日本の宿 かよう亭の料理は、38年を共にした板前、石政進氏と3年半かけて作った料理。今も全国の日本旅館の料理のお手本となっています。

           日本の宿はその土地の文化紹介の場

町が元気でなければ宿は生きられないのです。同じ先祖の遺伝子をもったを運命共有者が集まって地域を発展させなければ。そのために寄与する私でありたい、かよう亭でありたいと思い続けた、その象徴がかよう亭。

東京のまねばかりで、地域の個性を無くしていく。絶望的に見える日本だけれど、何か先に明るい展望があると信じている。地域は原点に戻って考え直すべきなのです。自分、仲間でどう生きていくのか、私を反面教師として考えて欲しいと思います。

「奥の細道」で山中温泉に8泊した芭蕉は、変えていけないものがある。その一方に新しい流れがある。それをどう汲み取って組み合わせていくのかということを語っています。それを今、私たちも議論して日本の生き方を考えるべき。“多分東京が一番遅いだろうね。”


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かよう亭の基本は素朴の素。無駄なものは一切省く。自然の中に生かされているという原点に戻ろうというもの。上口さんは、基本をふまえた上で人のまねではない自分の考えを持つこと。まわりとの調和をとることを語ってくださいました。今の時代の私たちに必要なことではないかと感じます。最後に、お父様は開業後5.6年経ってからやっと毎日来られるようになって、「お前はよく先を見越したなあ。」とおっしゃったことを記しておきましょう。。。

お持ち頂いたのは傷だらけのレコード。
学生時代から大好きだというシャンソンとジャズでした。

060.gif La Vie En Rose(バラ色の人生) /Louis Armstrong
060.gif C'est Si Bon /Louis Armstrong 
060.gifLa Vie En Rose(バラ色の人生)/Edith Piaf           
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by crossroadmidori | 2009-06-05 04:25 | 2009.06.05〈上口昌徳〉