カテゴリ:2009.12.18(諸田玲子)( 1 )   

諸田玲子さん(作家)   

今週のゲストは、先週に引き続き、時代小説作家の、諸田玲子さんです。

段ボールいっぱいの資料を引きずりながら。
「時代ものって、凛々しい男性とか、慎ましやかな女性とか出てくるじゃないですか。そんな人間だったり、空気だったり。私達がいま忘れているようなものをちょっと書きたいなって。
でも、時代小説をお書きになるのって、歴史の資料を調べたりするのが本当に大変そう。「歴史的な事実と言うのは、自分が一生懸命勉強すれば分かることですけれど、こういうときに何を食べてたか、とか、何を着てたか。そういうようなことを勉強するのが本当に難しくって。なかなか今でも追いつかないんです。」
大先生と呼ばれるような作家の方は、時代によってお部屋がそれぞれあったりするんだとか。例えば司馬遼太郎さんは、古本屋一軒分くらい資料を買って、トラック何台も使って運び込むんだそうです。「私の場合は、自分が動くほど部屋がないので、ダンボール箱にいっぱい資料を詰めて、それをずるずる引きずって、それで書いています(笑)」


f0207537_20415489.jpg♪「ラ・マンチャの男」より「見果てぬ夢
                ブライアン・ストークス・ミッチェル
「“見果てぬ夢”ってなんだかいいじゃないですか。みんなから馬鹿と言われても、夢に向かって走っている人って、魅力ありません?時代ものを書いていると、すごく思うの。みんな馬鹿なことをしながら死んでいくじゃないですか?どんなに偉くなっても、権力やお金を握ったとしても、人って短い人生を死んでいくわけですよね。それは平等。そういうことを書いていると、ちょっと俯瞰的に見られるようになるんですよね。人間ってやっぱり愚かだけれど、そこがこう、可愛くていいな、って。なんかね、人間を好きになるの。歴史を書いていると。


書こうと思うと不思議と資料が集まってくる・・・
「歴史ものを書いていて一番思うのが、女性については本当に資料がないの!」歴史ものは男性については、もういろんな人が書いているけれど、資料がないせいで、女性の視点で書かれたものは実はなかなかない。だから少しでも、女の気持ちを伝えたい、というのがあって、女性が主人公というのがどうしても多くなるんだそうです。
歴史というのは勝った人が書くものだから、勝った人の歴史しか残っていかない。例えば殺された女の人などは、“悪女”というふうにしていかなきゃならない。「でも私達がちょっと小さな資料、例えば家康の妻の築山殿の、本当に優しい教養のある手紙を読むと、この人がただの愚かな女で片付けられていいものだろうか、と少しカッとなって、じゃあ私が書いてやるぞって(笑)」
ただ、不思議なことが・・・。例えば「奸婦にあらず」という小説で、村山たかという女性のこと書いた時のこと。歴史上は悪く言われていた彼女のことを、もう一度調べなおして書こうと思うと、不思議なことに、いろんなところから無かったはずの資料が集まってきたりする。築山殿の時もそう。「私の力は小さくても、誰かがどこかで『書いて欲しい』と言っている。こっちが書きたいと思うと、そういうものが降りてくるみたいな・・・不思議な気持ちになります。歴史でもただ“女”としか書かれていない、名前さえ残っていない人もいるんですよ!だから、女性で頑張っている人って、特に応援したいなって気持ちがあるんですね。」


f0207537_20452052.jpg♪「ラ・カンパネラ」 諸田由里子
同じ苗字?!実は、ピアニストの諸田由里子さんは、諸田玲子さんの従姉妹さん。作家、ピアニスト、他にもバレエをされている姪御さんもおられるそうで、“表現する”ことに秀でた方ばかり!「みんなで励ましあって(笑)先程、“女性”って話が出ましたけれども、いろんな若い方がこれから活躍してくれたらいいな、って思いを込めて。」



“恥じらい”も綺麗。
“表現”も長い時代、女性が表立ってすることがなかなかできなかった。でも、いまは女性の方が強いと言われる時代。「ただ強くなっているだけじゃ駄目だな、ってすごく思いますね。今一番私達、女性として忘れているのはやっぱり“恥じらい”だと思います。」 ドキっ。「さっきの、誰かの声が聞こえてくるというのじゃないんだけど、こんなことしたらどこかで誰かが見てるな、とか。時代ものを書いているとすごくそういう気持ちが人を豊かにしてるな、って思うんですよね。」 お天道様が見ているよ、なんて昔はよく言いましたが、自然に対する感謝や、謙虚な気持ちというのが、確かに昔の人にはあった気がします。「もちろん女性がどんどん活躍してほしいけれども、そういうような、なにか一歩引くところっていうのも私はすごく綺麗だな、って思うんですよね。

ライブのものに触れる。
これからもっともっと、いろんな時代のいろんな人間を書いていきたい、という諸田さん。現在、新聞が2つに、週刊誌、その他5本くらいの月刊誌、合計8本くらいが進行中。とても忙しく、ほとんど外にも出られない状態。そんな諸田さん、スポーツを見たり、お芝居を見たり、なるべくライブのものに触れるようにしているそうです。「自分が大変な思いをしているせいか、なんか頑張っている姿って引っ張ってあげたくなる。一生懸命やることって、ひところは馬鹿馬鹿しいみたいに言われた時代もありましたけれど、私は今とても大事なんじゃないかなって素直に思いますね。なんでこんなに性格が良くなっちゃったんだろう?って、本当に(笑)


f0207537_20491396.jpg♪「アメイジング・グレイスヘイリー・ウェステンラ
とても透き通った美しい声で歌われるこの曲。「こういう曲を聴いたり、小説もそうだし、アスリートが頑張っている姿を見ると、なんかやっぱり人っていいな、って気持ちになりません?」




いくつから始めても遅くない。
諸田さんの周りには、75歳くらいで小説家デビューした方や、若い頃デビューしたけれど全然売れなくって、でも頑張って書いていてまた芽が出たりとか、いろんな方がいらっしゃるそうです。諸田さんご自身も、小説を書き始めたのは40歳を過ぎてから。「はじめはそのことが負い目になっていて、もっと早くやれば歴史も勉強できたし、もっといろんなものが書けたな、って思った。でも、なんか無駄になったことってないなって。いろんなことを回り道しながら来たのも良かったな、って今は思えますよね。」
人生に無駄なことはない。そして、何をやるにも遅くはない。諸田さんにそう優しく語られると、自分を信じる力が沸いてくる気がします。

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静岡の番組に出演できて嬉しいと言ってくださった諸田さん。最後に、静岡の女性も、街も、楽しくありましょうってエールを送ってくれました003.gif
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by crossroadmidori | 2009-12-18 21:01 | 2009.12.18(諸田玲子)